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子育てエッセイ

松井るり子
  岐阜市生まれ。児童文化専攻。文筆業。暮らしや子ども、子育て、絵本についての著書多数。
 たおやかで独創的な目線から書かれた文章は、子育て中のお母さんをほがらかに励ましてくれます。
 この連載は、冊子「こどものまど2012年度」(鈴木出版刊)に掲載されたものです。

連載4 現実とあこがれ

 子どもはきらきらぴかぴかしたものが好きです。大人の女性は、シックで上品なセンスを好み、わび・さびの世界への志向も持っていますから、子どもとぶつかります。
 それと似ていると思うのが、私がおかあさんたちからしばしば受ける質問、「子どもが読みたがる絵本と、私がいいと思う絵本が違うんですけど、どうしましょう」です。
 一つの回答は、
 「正解は子どもが知っています。大人の好みを押しつけるのはよくありません」でしょうか。自分の思い通りに子どもを動かしたいという親の支配欲が、時に子どもを悲しい目に遭わせるのを知る私たちは、「たとえ絵本でも、押しつけはやめた方がいいのかな」と、ちょっと退きます。
 でも私は、大人としての判断をせずに、子どもの言いなりになるのが親切とは思いません。そこで、こんなふうにしていました。図書館で借りる絵本は子どもに任せて、「読んで」と言われたら、一度は必ず読んでやりました。同じ本を何度借りてもいいし、家にある本を借りてきて「(家にある本と図書館で借りた本が)ほんとーに同じかどうか実験」してもいいのです。子どもが見つけてきた絵本が私の宝になったことは、何度もあります。
 買う絵本は、限られたお金とスペースの使い方に責任を取る私が決めました。そうすると、「読んで」と何度迫られても、機嫌良く読めるからです。我慢して読むと、我慢強い母たる私の、人格高潔なところは伝わりますが、我慢が要る絵本読みの「つまらなさ」も、しっかりと子どもに伝わるので、それはしません。100回でも読みたくなる絵本だけで、我が家の本棚を構成していました。
 子どもと大人の好みの違いは、やがて「子どもがゲームばかりしている。私はバーチャルおにごっこでなく、ほんとのおにごっこをしてほしい」「子どもはテレビを見たがる。私は勉強をさせたい」「子どもはケータイを持ちたがる。私はまだ持たせたくない」へと移行していくでしょう。そのときも「自分のための正解を、子どもが知っているはず」と言いますか? 私は言いません。この場合の子の選択は「こっちの方がらくだもん」と易きに流れているだけで、それが彼らの志を助ける願いとは思えないからです。
 自然に任せていれば、おのずと正解を選択できた時代が、過去にはありました。例えば「ご飯、汁物、焼き魚、野菜の煮物、青菜のおひたし」といった和食で、腹八分目にしていれば病気知らず。たまに身体の具合を悪くしたときには、「今の自分に必要な食べ物はこれ」と。薬を選ぶようにわかって、それが本当においしくて、かつ薬のように効くそうです。でも現在、ファストフードやインスタント食品の添加物や化学調味料に慣れきった舌が、自分の身体に薬のように効く食べ物を選択できるとは思えません。
 それと同じく、子どもを取りまく「自然(実はとっても不自然)に任せた」状態が、子どもに必要なものを、おのずと教えるような環境とは言えません。
 『きらきらピンク』(ナン・グレゴリー/作 リュック・メランソン/絵 灰島かり/訳 鈴木出版)のビビは、ピンクが大好きです。ピンクのきらきらしたものがほしくてほしくて、「どうにかなっちゃいそう」なぐらいです。あまり裕福でないこともあって、実際のビビの帽子とコートは草色。手袋とマフラーと靴は、髪と同色の褐色。短めのおかっぱをとめている小さなピンが、唯一ピンクです。
 ビビのお友だち三人組は、頭のてっぺんから足の先まで、おしゃれなピンクできめて得意そうです。ビビは、おこづかいを貯めて、花びらのようなピンクのドレスのお人形を買おうと、あこがれを育てています。

 ビビの気持ちを知る両親は、春になると、ピンク探しのピクニックに誘ってくれました。ピンクのジャムサンド、ピンクのお茶、ピンクのケーキ。花盛りの桜も、ペットショップの赤ちゃんねずみの耳も、地面に落ちたスモモの花びらもピンクでした。かあさんは、ビビと見つけたピンクのことを、ノートにメモしてくれます。
 長距離トラックの運転手のとうさんは、自分の憧れについて話してくれました。それは、輝く電飾のついたトラックを手に入れることでした。ビビは、なぜおとうさんが自分のトラックを飾らないのか尋ねます。おとうさんは、「欲しい物が全部手に入るわけじゃないさ」と答えました。何かを欲しいと願うのはいいことだと知っているとうさんは、願いが叶わぬビビの寂しさにも、寄り添ってくれます。そんなとうさんと一緒に夕焼けを眺めながら、ビビは、自分が欲しい物を全部持っていると気づきました。
 

 まだまだ軽薄な願いを抱きがちなオンナノコの私も、うれしくなる絵本でした。きっと、あなたもお嬢さんも、この絵本を楽しまれることと思います。そして、今持っているものの良さに気づく楽しさに、にっこりなさると思います。

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